歴史改変もの(オルタネイト・ヒストリー)
ある歴史上の出来事が実際とは違う結果になった世界を舞台に、その分岐がもたらしたものを描くフィクション。
最終更新歴史改変もの(オルタネイト・ヒストリー)とは、ある歴史上の出来事が違う形で進んでいたら世界はどう変わっていたかを想像する、スペキュレイティブ・フィクションのジャンルです。物語は分岐点、つまり現実の歴史が書き換えられる瞬間から始まり、その変化が政治、文化、技術、そして一人ひとりの人生にどんな結果をもたらしたのかをたどっていきます。歴史改変ものは、出来事を実際に起きたとおりに劇として描く歴史小説とも、舞台をまるごと一から創り出す異世界ファンタジーとも異なります。このジャンルの力は、よく知っているものを土台にしていることにあります。読者は実際に何が起きたのかを知っているので、あらゆるずれがそれだけで劇的な重みを帯び、現実の歴史がいかに偶然に左右されてきたかを考えさせるのです。
フィリップ・K・ディックの『高い城の男』は、このジャンルを代表する作品の一つで、枢軸国が第二次世界大戦に勝ち、アメリカが日本とドイツの占領地域に分割された世界を描いています。フィリップ・ロスの『プロット・アゲンスト・アメリカ』は、孤立主義者のチャールズ・リンドバーグが1940年の大統領選挙でフランクリン・ルーズベルトに勝っていたらどうなっていたかを探り、ニューアークに暮らすユダヤ系の一家の目を通して、アメリカで反ユダヤ主義が台頭していくさまを描きます。スザンナ・クラークの『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』は、イングランドに魔術が復活したナポレオン時代を描き直し、歴史改変とファンタジーを溶け合わせて、ワーテルローの戦いが大砲だけでなく呪文でも戦われる世界をつくり上げました。どの作品も、歴史の分岐をただの思考実験としてではなく、権力、アイデンティティ、文化のもろさという現実世界のテーマを見つめ直すための手立てとして使っています。
歴史改変ものを書くには、書き換える現実の歴史を徹底的に調べることが欠かせません。実際に何が起き、それがなぜ起きたのかを深く理解しているほど、別の展開になっていたらどうなったかを、説得力をもって推し量ることができます。まず分岐点を決め、その結果を順序立てて考え抜きましょう。その変化は、政治、技術、社会運動、日々の暮らしへと、どのように波紋を広げていくでしょうか。筋に都合のよい部分だけを変えて、それ以外はすべて私たちの歴史とそっくり同じにしておきたくなる誘惑には負けないでください。歴史上の大きな変化は、暮らしのあらゆる領域に連鎖的な影響を及ぼすはずです。同時に、書いているのは歴史の論文ではなく小説だということも忘れないでください。歴史の改変は、物語の人物とテーマを生かすためのものでなければなりません。最も優れた歴史改変ものは、分岐した歴史を通して人間の本質について何か真実を照らし出し、ありえたかもしれない世界を見せることで、読者に自分の生きる世界をよりはっきりと見つめさせるのです。