舞台設定(セッティング)
物語が起こる時代、場所、社会の環境。物語の物理的な背景と文化的な背景を形づくります。
最終更新舞台設定とは物語の「いつ」と「どこ」のことですが、単なる地理や年代をはるかに超えたものです。しっかりと描き込まれた舞台設定には、風景、建物、天気、感覚の細部といった物理的な環境に加えて、人物たちが生きる社会や文化の文脈も含まれます。その時代の技術、世の中に行きわたっている社会の規範、階級の仕組み、そして日々の暮らしを左右する政治の空気などです。舞台設定は、物語を入れておくただの器ではありません。人物たちの選択を縛り、葛藤の種を生み、物語の感情の調子を決める、能動的な力です。産業革命期のひしめき合う安アパートを舞台にした物語と、アメリカ西部の果てしない大草原を舞台にした物語とでは、そこから生まれる可能性がまるで違います。
文学や映画には、舞台設定がほとんど一人の登場人物のような存在感をもつ例があふれています。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』では、ヨークシャーの荒野が、ヒースクリフとキャサリンの荒々しく手なずけられない情熱を映し出し、それと対照的なスラッシュクロス屋敷は、文明的な抑制を表しています。チャールズ・ディケンズは『荒涼館』で、霧に閉ざされたヴィクトリア朝ロンドンの街路を、司法制度の不透明さのたとえとして使いました。映画では、スタンリー・キューブリックの『シャイニング』のオーバールック・ホテルが、単なる場所から、物語の恐怖を突き動かす悪意ある存在へと変わっていきます。これらの作品は、舞台設定が文字どおりの次元と象徴の次元の両方で働き、物語に幾重もの意味を与えうることを示しています。
効果的な舞台設定をつくるには、目に見えるものの描写だけに頼らず、五感をすべて使いましょう。その場所は、一日のうちの時間帯によってどんな音がするでしょうか。空気はどんな匂いがするでしょうか。足もとの地面はどんな感触でしょうか。ありきたりな描写ではなく、具体的で手ざわりのある細部で読者を物語のなかに立たせてください。かつては華やかだった舞踏室の壁紙がはがれかけていることに人物が気づく場面は、建物が古かったと書くよりも、ずっと多くを語ります。物語が進むにつれて舞台設定がどう変わっていくか、そしてその変化が人物たちの内面の歩みをどう映し出し、あるいはどう際立たせるかも考えてみましょう。何より大切なのは、物語が必要とする緊張と可能性を自然に生み出す環境を選び、あるいはつくり出して、舞台設定を物語のために働かせることです。