用語集

ロア(背景設定)

物語の目の前の筋を越えて広がる、架空の世界の歴史、神話、積み重なった知識。

最終更新

ロアとは、架空の世界を下から支える、積み重なった歴史、神話、伝説、世界についての知識のことです。物語が読者に直接見せるものの外に広がる、情報の深い貯水池であり、遠い昔の戦争、建国の神話、滅びた王国、予言、歴史上の人物など、世界を今の姿にかたちづくってきたものすべてを含みます。ロアは奥行きと時間の重みをもたらし、架空の世界に、現実の世界と同じくらい豊かで込み入った過去があるかのように感じさせます。ロアとプロットの違いをわきまえておくことは大切です。ロアは背景であり、何世紀もかけて積もった地層です。プロットは、その手前でいま進んでいる物語です。腕の見せどころは、ロアに物語を豊かにさせながら、ロアにプロットを呑み込ませないことにあります。

J・R・R・トールキンの『シルマリルの物語』は、おそらく物語の世界で最も有名なロアの集大成で、『指輪物語』に先立つ天地創造の神話、神々の系譜、何千年にもわたる歴史が収められています。刊行された『指輪物語』は、この広大な背景をほのめかすだけですが、その存在は、古い遺跡や、うろ覚えの歌や、先祖伝来の剣の一つひとつから感じとれます。ゲームでは、〈ダークソウル〉シリーズが、環境で語るロアの先駆けとなりました。アイテムの説明文、建物の細部、NPCのせりふの切れ端を通して物語を語り、プレイヤーはそれを考古学者のようにつなぎ合わせていかなければなりません。マーベルとDCのコミックの世界は、何千号にもわたって何十年も積み重ねられたロアそのもので、長年の読者には報いる一方、新しい読者にとっては入りにくさにもなる、濃密な物語を生み出しています。

ロアを効果的に使うためには、ヘミングウェイのものとされることの多い「氷山の理論」が欠かせません。作者は、ページに現れるよりもはるかに多くのことを、自分の世界の歴史について知っておくべきだということです。この隠れた知識が、目に見える物語を構造の面で支え、一貫性を与えます。ロアを作品に取り込むときは、その歴史のなかで生きる人物たちの自然なふるまいを通して明かしましょう。伝説の戦いの名を叫んで仲間を鼓舞する兵士、古い文献の意味をめぐって議論する学者、暗い由来が忘れられたわらべ歌を口ずさむ子ども。そうした場面です。教科書の記述のように読める、百科事典さながらのロアの詰め込みは避けてください。目指すのは、読者にこの世界にはどこまでも探っていける深みがあると感じさせながら、物語そのものは読みやすく、ぐいぐいと進んでいくようにすることです。使う量よりも多くのロアをつくり、それを控えめに使いましょう。

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