用語集

変更履歴の記録(トラック・チェンジ)

編集作業での挿入、削除、コメントを記録するデジタルの機能。複数人での共同作業を可能にします。

最終更新

変更履歴の記録とは、文書に加えられたすべての挿入、削除、書式の変更を記録し、受け入れる、却下する、話し合うことのできる目に見える書き込みとして表示するデジタル編集の機能です。Microsoft Wordによって広まったこの機能は、今ではGoogle ドキュメント、Scrivener、出版向けの専門ツールなど、ほとんどの執筆・編集環境で使えます。この機能は、推敲を透明で、元に戻せるものにすることで、編集の進め方を一変させました。編集者が加えた変更はすべて作者に見え、作者は一つひとつの修正を検討してから受け入れるか却下するかを決められます。編集者が原稿に黙って手を入れていたかつてのやり方に代わり、作者が自分の文章に対してより大きな決定権をもてるようになったのです。

プロの出版の現場では、変更履歴の記録は編集作業の背骨です。構成面を見る編集者はコメントと構成の組み替え案を使うことがあり、原稿整理を担う編集者はたいてい変更履歴の記録をオンにしたまま直接手を入れ、読点の位置、言葉の置き換え、文法の修正の一つひとつを作者が確認できるようにします。コメント機能を使えば、作者と編集者が余白で会話でき、意見の分かれる変更について議論ができます。ペンギン・ランダムハウスやハーパーコリンズといった大手出版社は、変更履歴を軸にした標準的な作業の流れを整えており、原稿は何度もの編集を経て、その一回一回が記録され、保管されます。この機能は、リモートで働くフリーランス編集者の広がりも後押ししました。編集者と作者は、一度も顔を合わせることなく、時差を越えてそれぞれの都合のよい時間に共同作業ができるからです。

自分の推敲で変更履歴の記録をうまく使うには、一緒に作業する相手とはっきりした取り決めをしておきましょう。編集者が直接修正を入れるのか(原稿整理の場合)、コメントで修正を提案するのか(構成面の助言の場合)を決めておきます。記録された変更を確認するときは、すべてを何も考えずに受け入れたくなる気持ちを抑えましょう。腕のいい編集者でも、ときには誤りを持ち込んだり、作者なら選ばないかたちで文章の声を変えてしまったりすることがあるので、修正の一つひとつを検討する価値があります。逆に、身構えて変更を却下するのもやめましょう。編集者が印をつけた箇所は、その具体的な直し方が正しくなくても、手を入れる必要があることが多いのです。自分ひとりで推敲するときにも、変更履歴の記録を使ってみるとよいでしょう。削った箇所と加えた箇所が目に見えると、その変更が本当に文章をよくしているかを判断しやすくなります。必要なときに以前の稿を見直せるよう、編集の各段階で版を保存しておきましょう。

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