用語集

ビート(劇のビート)

場面のなかの小さな行動の単位、または感情の変化。人物の作戦や場面の力関係が切り替わる点を示します。

最終更新

脚本や戯曲でいうビートとは、場面のなかで物語を刻む最小の単位のことです。人物どうしの感情の力関係を動かす、一つのやりとり、一つの行動、一つの瞬間を指します。ビートはそれぞれ、どれほどかすかであっても、人物の作戦や意図、感情の状態が変わったことを表しています。懇願していた人物が脅しに転じる、自信が疑いに変わる、正直に話していた人物が嘘をつきはじめる。そのとき新しいビートが始まっています。壁がれんがを積んでできるように、場面はビートを積み重ねてできており、そのビートをどう並べ、どんな速さで運ぶかによって、場面が張り詰めたものになるか、笑えるものになるか、甘いものになるか、退屈なものになるかが決まります。会話のなかをあてもなく漂うのではなく、形と勢いのある場面を書くには、ビートの構造を理解しておくことが欠かせません。

劇のビートという考え方は演劇に由来し、とりわけコンスタンチン・スタニスラフスキーの演技法にさかのぼります。スタニスラフスキーは俳優たちに、場面のなかで移り変わる目的と作戦をつかむため、場面を小さな単位(のちにビートと呼ばれるもの)に分けるよう教えました。実際、あらゆる劇の媒体の優れた作品には、ビートがはっきりと見てとれます。『ダークナイト』のバットマンとジョーカーの取り調べの場面では、やりとりの一つひとつが別々のビートになっています。ジョーカーが挑発し、バットマンが力ずくで迫り、ジョーカーがまるで動じていないことを見せ、力関係がひっくり返るのです。『マリッジ・ストーリー』では、チャーリーとニコールの中心となる口論が、いくつものビートを経て激しさを増していきます。一つのビートごとに感情の新たな一線を越え、抑えた意見の食い違いから、むき出しの残酷さへ、そして打ちのめされた後悔へと進んでいき、そのビートの変わり目が、特定のせりふや身ぶりにぴたりと対応しています。脚本のせりふのなかに置かれるト書きの「(間)」、英語でいう「(beat)」は、人物が次のせりふの前に何かを受け止め、考え、気持ちを切り替える短い間合いを示すもので、同じ原理をごく小さな単位で応用したものです。

ビートの構造がしっかりした場面を書くには、まず、その場面で人物それぞれが何を求めていて、それを手に入れるためにどんな作戦をとるのかを見きわめましょう。作戦が失敗し、人物が別のやり方に切り替えるたびに、ビートが変わります。せりふを書く前にこうした切り替わりを書き出しておけば、場面に自然な高まりとリズムが生まれていることに気づくはずです。推敲の段階で場面が平板に感じられるなら、ビートが動いていないことが原因である場合がほとんどです。人物が最初から最後まで同じ作戦、同じ感情の調子のままでいるため、せりふが上へ積み上がらず、横へ流れていくだけになっているのです。人物にやり方を変えざるをえなくさせる障害や驚き、新たな事実を持ち込みましょう。ビートの長さにも変化をつけてください。短いビートをたたみかけると切迫感と緊張が生まれ、一つのビートを長く引き延ばすと、サスペンスや親密さが生まれます。せりふのなかに「(間)」を書くときは、言葉よりも沈黙のほうが多くを語る瞬間を示すために、意図をもって使いましょう。ただし、使いすぎは禁物です。一行おきに「(間)」が散らばっている脚本では、間合いの力が失われてしまいます。

さっそく書き始めませんか?

計画も、下書きも、共同編集も。書き手のために作られたひとつのワークスペースで。

Plotiarを無料で試す

許可をいただいた場合にのみ、Plotiarの利用状況を把握して改善するために分析Cookieを使用します。拒否した場合、分析データは一切送信されません。サインインとセキュリティに必要なCookieは常に有効です。 Cookieポリシー