中編小説(ノヴェラ)
短編小説より長く、長編小説より短い小説。英語ではおおむね1万7500語から4万語ほどです。
最終更新中編小説は、短編小説と長編小説のあいだに位置する形式で、英語ではおおむね1万7500語から4万語ほどとされますが、この境界はあいまいで、しばしば議論の的になります。中編小説を隣の形式と分けるのは、語数よりも、その狙いと射程です。短編小説よりも人物を掘り下げ、テーマを探り、物語を複雑に組み立てる余地がありながら、長編小説が広がりと引き換えに失いがちな凝縮と緊迫感を保っています。中編小説はたいてい、一本の筋、限られた登場人物、凝縮された時間に焦点を絞ります。そのため、短編では収まりきらないけれど、長編に引き延ばすと薄まってしまう物語にうってつけなのです。
文学史に残る名作のなかにも中編小説は少なくありません。フランツ・カフカの『変身』は、凝縮された形式を生かして、グレゴール・ザムザの変身がもたらす息の詰まるような恐怖を強めています。長編の長さに引き延ばせば、その窒息しそうな力は失われてしまうでしょう。ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』が悪夢のような強度をもっているのは、凝縮された物語の圧力から一瞬たりとも読者を解放しないからです。アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』は、年老いた漁師と巨大なカジキとの闘いというただ一つの劇的な状況を、長編では薄まってしまうであろう集中と簡潔さで描ききる中編小説の力を示しています。ケイト・ショパンの『目覚め』とトニ・モリスンの『スーラ』は、どちらも中編小説の凝縮された射程を生かし、一人の人物の変化を胸をえぐるほど正確に描いています。
中編小説を書くには、短編とも長編とも違う心構えが必要です。場面をじっくり展開し、人物を少しずつ明かしていくゆとりはありますが、長編なら受け入れられる脱線やサブプロット、広がりのある世界設定を盛り込む余地はありません。その形式に自然に収まる物語を選びましょう。転機を迎えた人間関係、目的地の決まった旅、何年ではなく数日のうちに展開する危機などです。アウトラインは慎重につくりましょう。中編の長さでは、構成の問題はすぐに表に出て、水増しもすぐに見抜かれてしまうからです。中編小説は、短編より長い距離にわたって緊張を保ちながら、物語の核に役立たないものはすべて締め出す規律をもった書き手に報いてくれます。