用語集

言葉選び(ディクション)

特定の効果や雰囲気、正確さを狙って、書き手が意図的に行う言葉の選択。

最終更新

言葉選び(ディクション)とは、書き手がどの言葉を選ぶかということで、語彙そのものだけでなく、ページの上の一語一語がもつ含み、響き、出自、言葉の格までが含まれます。公園を「散歩する」人物と、公園を「とぼとぼ歩く」人物とでは、どちらも歩いていることに変わりはないのに、住んでいる世界がまるで違います。日本語では、和語、漢語、カタカナ語のどれを選ぶかでも文章の手触りが大きく変わります。言葉選びは語調を形づくり、人物を描き出し、テンポを操り、文章が格調高く感じられるか、くだけて感じられるか、正確か印象主義的か、温かいか冷ややかかを決めます。書き手が技術を発揮する、最も細かな単位なのです。

コーマック・マッカーシーは『ブラッド・メリディアン』で、聖書の言葉、地質学の用語、古風な語彙を駆使し、太古のような、情け容赦のない文章の手触りをつくり出しています。レイモンド・カーヴァーの言葉選びはその正反対です。飾り気のない日常の言葉を外科医のような正確さで並べ、ありふれた暮らしの下に潜む静かな絶望を浮かび上がらせます。ナボコフは『ロリータ』で、言葉選びを奔放なまでに遊ばせています。地口、頭韻、意味と同じくらい響きのために選ばれた言葉に満ちたその文章は、ハンバートが自らの弁舌に酔いしれるのと同じように、読者を誘惑する声を生み出しているのです。

言葉選びを磨くには、自分がつい手を伸ばしてしまう言葉に気づくことから始めましょう。推敲のときには、重要な言葉を一つずつ吟味し、それが最も正確で、最も情景を呼び起こす選択かどうかを問います。類語辞典は別の候補を示してくれますが、注意も必要です。最良の言葉とは、最も立派に見える言葉ではなく、文のリズム、人物の語彙、場面の感情の調子にしっくり合う言葉です。言葉選びの一貫性はとても大切です。場違いな格の言葉が一つ混じるだけで、丁寧に築き上げた語りの声の幻想が粉々に砕けてしまうことがあるのです。

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