用語集

ジャンル

共通のお約束、テーマ、読者の期待によって特徴づけられる文学作品の分類。物語の書かれ方と受け止められ方を形づくります。

最終更新

ジャンルとは、共通するお約束、題材、感情的な効果、読者の期待によって文学作品を分ける分類の仕組みです。この考え方はアリストテレスの『詩学』にさかのぼります。アリストテレスは悲劇と喜劇、叙事詩と抒情詩を区別しました。しかし、ミステリー、ロマンス、SF、ファンタジー、ホラー、スリラー、西部劇、そしてそれらの数多くのサブジャンルといった現代のジャンル区分は、主に、本をそれを最も楽しんでくれそうな読者に届けたいという出版業界の必要から生まれました。ジャンルは単なるラベルではなく、一連の約束です。ロマンスを手に取る読者は、物語の中心に恋愛があることを期待します。ミステリーを選ぶ読者は、解くべき謎があることを期待します。こうした期待が、書き手と読者の双方が拠って立つ枠組みをつくり、内容を縛ることなく構造を与えてくれるのです。

ジャンル小説と純文学の区別は、出版界でも学界でも広く浸透していますが、見かけよりもずっと行き来しやすいものです。アーシュラ・K・ル=グウィンの『闇の左手』は、偉大なSFであると同時に偉大な文学でもあります。コーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』は、西部劇であり、純文学作品であり、暴力をめぐる哲学的な思索でもあります。カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は、純文学の感性のなかでSF的な設定を使い、コルソン・ホワイトヘッドの『地下鉄道』は、歴史小説に思弁的な要素を融合させています。現代の最も興味深い作品の多くは、ジャンルとジャンルの境目に住み、いくつもの伝統から汲み取りながら、関わるお約束には敬意を払いつつ、簡単には分類できない作品を生み出しているのです。

ジャンルを理解することは、お約束の内側で書くつもりの書き手にも、それに逆らって書くつもりの書き手にも欠かせません。関心のあるジャンルについては、その原点となった作品と、今のベストセラーの両方を読んで研究しましょう。ジャンルは、書き手と読者の世代が替わるたびに進化していく生きた伝統だからです。選んだジャンルの核となるお約束を見きわめましょう。構成上の期待、人物の型、読者が求める感情的な見返りです。そのうえで、そのお約束とどう向き合うかを決めます。新鮮な勢いで期待に応えるのか、驚きを生むために裏切るのか、いくつものジャンルのお約束を混ぜ合わせて新しいものをつくるのか。ジャンルを深く理解している書き手は、どの期待に応え、どれをひっくり返すかを意識して選べます。そうして、満足できるほどなじみがあり、わくわくするほど独創的な作品を生み出せるのです。

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