用語集

枠物語

外側の物語が内側の物語の前提を与える、物語のなかに物語がある構成。

最終更新

枠物語(額縁小説とも)とは、外側の物語が一つ以上の内側の物語を包み込み、その前提を与える構成の仕掛けです。外側の枠はたいてい、誰が内側の物語を語っているのか、なぜ語っているのか、誰に向かって語っているのかを示します。この入れ子の構造によって、語ることと語られることとのあいだに関係が生まれ、まっすぐな語りでは得られない、解釈の幅、信頼性の問題、テーマについての批評といった次元が加わります。日本の古典でも、二人の老人の昔語りという枠をもつ『大鏡』がよく知られています。

『嵐が丘』は古典的な枠物語です。外側の枠を語るのはロックウッドですが、ヒースクリフとキャサリンの内側の物語は主にネリー・ディーンの口から語られ、その視点が出来事を形づくり、場合によってはゆがめてもいます。『プリンセス・ブライド・ストーリー』は、おとぎ話を、祖父が病気の孫に読み聞かせる本という枠に入れることで、物語が自分自身についてユーモアと温かさをもって語れるようにしています。ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』は、テムズ川に浮かぶ船の上でのマーロウの語りを枠にして、コンゴへの旅を描き、文明化されたロンドンとマーロウが語る闇とのあいだに、忘れがたい対応関係を生み出しています。『千夜一夜物語』は、おそらく世界文学で最も影響力のある枠物語でしょう。シェヘラザードは処刑を先延ばしにするために物語のなかに物語を語り、物語ること自体が生死を分ける、幾重にも物語が入れ子になった構造をつくり上げています。

枠物語が力強いのは、物語るという行為そのものを前面に出すからです。読者は、何が起きたのかだけでなく、なぜ誰かがこの物語を語っているのか、その語りを信じてよいのかを考えるよう促されます。枠物語を組み立てるときは、外側の物語にもきちんと存在理由をもたせましょう。ただの足場ではなく、内側の物語に意味やアイロニーや感情の響きを加えるものであるべきです。枠と、枠に収められた物語が互いを照らし合い、層と層のあいだの対話が全体を豊かにするようにしましょう。

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