信頼できない語り手
語る内容が偏っていたり、不完全だったり、意図的に読者を欺いていたりする語り手。
最終更新信頼できない語り手とは、その語る出来事をそのまま信じることができない語り手のことです。信頼できない理由は、心の不安定さ、意図的な嘘、世間知らず、個人的な偏見、知識の不足などさまざまです。この技法によって語り手の話と真実とのあいだにずれが生まれ、読者は本当は何が起きたのかを自分で組み立てるよう促されます。
『ゴーン・ガール』では、エイミーの日記が周到に組み立てられた嘘の物語を差し出し、読者も登場人物も欺かれます。『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンの信頼できなさは、もっと微妙です。嘘をついているわけではありませんが、心の落ち込みと未熟さが、出来事の受け止め方をゆがめています。『ファイト・クラブ』では語り手の信頼できなさが徹底していて、物語の核心にある仕掛けを覆い隠しています。
信頼できない語り手を成功させる鍵は、手がかりを仕込んでおくことです。読者は真相に驚かされるべきですが、振り返ってみれば、兆しはずっとそこにあったと気づけるようにしておくのです。信頼できなさが恣意的に見えたり、反則のように感じられたりすると、読者は語り手ではなく作者への信頼を失います。この技法が最も生きるのは、信頼できなさの中身そのものが、その人物について意味のある何かを明かすときです。