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原稿書式ガイド:業界の標準

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原稿の書式は、書き手に不釣り合いなほどの不安を抱かせるテーマのひとつです。ヘッダーの位置がずれていたり、フォントを間違えたりしただけで、誰にも一語も読まれないうちに原稿が不採用になるのではないか、と恐れるのです。実際はもっと地味なものです。標準的な書式があるのは、編集者、エージェント、組版担当者が原稿を効率よく読み、評価できるようにするためです。正しい書式の原稿はプロらしさを示します。書式の乱れた原稿は、余計な引っかかりを生みます。どちらにしても、書式だけで作品の成否が決まることはありません。決めるのは文章です。それでも、自分の物語と、それを出版してくれるかもしれない人たちとのあいだに、不要な障害を置く理由はありません。

このガイドでは、英語圏の出版業界で標準とされる、長編、短編、脚本の書式の決まりごとを紹介します。これらは業界の標準であって、絶対の法則ではありません。出版社やエージェントによっては、以下の標準より優先される独自の条件があります。何かを送る前には、必ず投稿ガイドラインを確認しましょう。けれども、ガイドラインに「標準的な原稿書式」と書かれていたら、それはここで紹介するもののことです。

長編の原稿書式

フォントとサイズ

12ポイントのセリフ体を使いましょう。昔からの標準はTimes New Romanです。Courierも使えますし、かつては業界の標準でしたが、原稿がかなり長くなってしまうため、今はあまり好まれていません(Courierは等幅フォントで、どの文字も横幅が同じだからです)。Georgia、Garamond、Book Antiquaなど、ほかの読みやすいセリフ体を受け付けるエージェントや編集者もいますが、いちばん無難なのはTimes New Romanです。迷ったら、Times New Romanを使いましょう。

投稿する原稿に、サンセリフ体(Arial、Helvetica、Calibri)を使ってはいけません。長い文章では読みにくくなります。装飾的なフォントや見出し用のフォントは、どんな場合でも使ってはいけません。

余白

上下左右の4辺すべてに、1インチ(2.54cm)の余白を設定しましょう。ここは譲れません。1インチの余白は編集者の書き込みのためのスペースになり、プリンターやソフトが違ってもページ数が変わらないようにしてくれます。

行間

原稿全体をダブルスペースにしましょう。1.5行ではありません。「最小値」で2行でもありません。ちょうど2行です。ダブルスペースは編集の書き込みのための余地を作り、大量の文章を読みやすくします。毎週何百ページも読むエージェントや編集者は、その行間を頼りにしています。

段落と段落のあいだに、余分なスペースを入れてはいけません。必要な縦の間隔は、行と行のあいだのダブルスペースだけです。使っているワープロソフトが初期設定で段落のあとにスペースを入れる場合は(Microsoft Wordの一部のバージョンの初期設定がそうです)、その設定をオフにしましょう。

段落の字下げ

すべての段落の1行目を、0.5インチ(1.27cm)字下げしましょう。字下げはワープロソフトの段落書式で設定し、Tabキーは使わないでください。Tabキーで作った字下げは、別のソフトで開いたり別の形式に変換したりすると、予想外の動きをすることがあります。

章見出しやシーンの区切りの直後の最初の段落は、字下げしません。これは組版上の慣習です。新しいまとまりの最初の段落は左端から始め、新たな始まりを示します。

行揃え

すべての文章を左揃え(右端は不揃い)にしましょう。両端揃えは使いません。両端揃えにすると単語と単語の間隔が不均一になり、組版された本ならきれいに見えても、原稿では雑に見えます。原稿は組版されたものではなく作業用の文書で、左揃えが標準です。

タイトルページ

タイトルページは原稿の最初のページです。次のものを入れます。

  • 左上:本名、住所、電話番号、メールアドレス。エージェントがいる場合は、代わりにエージェントの連絡先を入れます。
  • 右上:おおよその語数を、千の位で丸めて書きます。「85,000 words」が正しい書き方です。「84,732 words」は無用に細かすぎます。
  • ページの中央:作品名。すべて大文字でも、通常の大文字小文字の書き方でも構いません。作品名の下に「by」と、ペンネーム(本名と違う場合)か本名を書きます。
  • タイトルページにはヘッダーもページ番号も入れません。

タイトルページはすっきりさせておきましょう。画像も、装飾も、エピグラフも、ジャンルの表示も入れません。上に挙げた情報だけです。

ヘッダーとページ番号

2ページ目(本文の1ページ目)から、すべてのページの右上にヘッダーを入れましょう。ヘッダーには、姓、スラッシュかスペース、作品名を短くしたもの(1〜2語のキーワード)、そしてページ番号を入れます。たとえば次のとおりです。

Feldman / SILVER DAWN / 1

ヘッダーを左に、ページ番号を右に置く書き手もいます。どちらの慣習でも構いません。大切なのは、原稿を落としたり順番がばらばらになったりしても、どのページか分かることです。読み手は、どのばらばらのページからでも順番を組み立て直せます。

ワープロソフトのヘッダー機能を使いましょう。各ページに手でヘッダーを打ち込んではいけません。

章見出し

各章は新しいページから始めます。章見出しを打つ前に、ページの3分の1ほど(上におよそ4〜6行の空行)下げましょう。章見出しは中央揃えにします。「Chapter One」「Chapter 1」「1」、あるいは章題のどれを使っても構いません。原稿全体で統一しましょう。

章見出しのあとに1〜2行空けてから、本文を始めます。前述のとおり、各章の最初の段落は字下げせず、左端から始めます。

シーンの区切り

章の中でシーンを区切る必要があるとき(時間、場所、視点が変わるとき)は、空行に中央揃えのハッシュ記号(#)か、中央揃えの3つのアスタリスク(* * *)を置きましょう。空行だけを使ってはいけません。印刷や書式の変換で消えてしまうことがあり、読み手がシーンの区切りに気づかないかもしれないからです。

シーンの区切りがページのいちばん上や下に来てしまい、見えなくなりそうなときも、ハッシュ記号やアスタリスクがあれば確実に気づいてもらえます。

強調

強調、心の中の思い、作品名、外国語にはイタリックを使います。地の文の強調に太字を使ってはいけません。強調に下線を使ってもいけません(下線はタイプライターの時代にイタリックを示すために使われていたもので、デジタルの時代にはイタリックを使えば済みます)。人物が叫んでいて文脈上どうしても必要なまれな場合を除き、強調のためにすべて大文字にしてもいけません。

会話文の書式

英文の原稿では、会話文は標準的な約物の決まりに従います。

  • 話し言葉は二重引用符で囲みます。
  • 話し手が変わるたびに改行して新しい段落にします。
  • 発話タグ("she said"、"he asked")は、会話文と同じ文の一部です。閉じ引用符の前はカンマにします:"I do not think so," she said.
  • 動作の描写は別の文です。閉じ引用符の前はピリオドにします:"I do not think so." She set down her glass.
  • ひとりの人物のせりふが複数の段落にわたって続く場合は、各段落を引用符で始め、閉じ引用符は最後の段落にだけ付けます。

終わり

原稿の最後の行のあと、数行空けて「END」か「THE END」と中央揃えで書きます。原稿がここで完結していて、抜けているページがないことを読み手に知らせるためです。

短編の原稿書式

短編の書式は、長編の書式と同じ基本ルールに従いますが、いくつか違いがあります。

1ページ目(タイトルページは別にしない)

短編には、ふつう独立したタイトルページを付けません。代わりに、1ページ目に次のものを入れます。

  • 左上:本名、住所、電話番号、メールアドレス。シングルスペースで。
  • 右上:おおよその語数。
  • ページの中央、上から3分の1ほどの位置:作品名と著者名。
  • 2行空けてから、本文を始めます。

ヘッダー

長編の書式と同じです。2ページ目から、右上に姓、作品名のキーワード、ページ番号を入れます。

そのほかすべて

長編の書式と同じです。12ポイントのTimes New Roman、1インチの余白、ダブルスペース、0.5インチの段落の字下げ、左揃え、中央揃えのシーンの区切り、最後に「END」。

脚本の書式

脚本の書式は、散文の書式より厳格です。書式が特定の技術的な役割を担っているからです。正しい書式の脚本の1ページは、上映時間のおよそ1分に相当します。この比率は、書式が正しいことを前提にしています。書式から外れるとページ数があてにならなくなり、脚本を製作に回すのが難しくなります。

フォント

Courierの12ポイント。脚本に使えるフォントはこれだけです。1ページ1分の比率を保っているのは、Courierの等幅の文字なのです。Courier Newは使わないでください(文字間隔がわずかに違います)。CourierかCourier Final Draftを使いましょう。

余白

  • 左余白:1.5インチ
  • 右余白:1インチ
  • 上下の余白:1インチ
  • せりふの左端:用紙の左端から2.5インチ
  • せりふの右端:用紙の右端から2.5インチ(左端からおよそ6インチ)
  • 人物名(せりふの上):用紙の左端から3.7インチ
  • パレンセティカル(せりふに添える指示):用紙の左端から3.1インチ

この寸法がばかばかしいほど細かく見えるなら、実際そのとおりです。だからこそ、ほとんどすべての脚本家が脚本専用のソフト(Final Draft、Highland、Fade In、WriterSolo、あるいは無料の選択肢としてFountainと変換ツール)を使っています。ソフトが自動で書式を整えてくれます。苛立ちを楽しめるのでない限り、ワープロソフトで脚本の書式を手作業で整えようとしてはいけません。

シーン見出し(スラグライン、日本の脚本でいう柱)

どのシーンも、すべて大文字のシーン見出しで始まります。見出しは3つの部分からなります。

  1. INT.かEXT.(屋内か屋外か)
  2. 場所
  3. 時間帯(DAY、NIGHT、DAWN、DUSK、CONTINUOUS、LATER)

例:

INT. HOSPITAL CORRIDOR - NIGHT

EXT. CENTRAL PARK - DAY

シーン見出しは描写ではありません。ラベルです。短く、具体的にしましょう。

アクション行(ト書き)

アクション(描写、ト書きとも呼ばれます)は、現在形で、シングルスペースで、通常の書体(太字でもイタリックでもない)で書きます。アクション行は引き締めましょう。1段落につき3〜4行までです。ページの余白は味方です。脚本をテンポよく読みやすいものにしてくれます。アクションの文章がぎっしり詰まったかたまりは読み手の足を遅らせ、書き手がこのメディアを理解していない印象を与えます。

人物を初めて登場させるときは、アクション行の中でその名前をすべて大文字で書き、続けてかっこ内に年齢、そして目に見える短い描写を書きます。紹介したあとは、名前を通常の書き方で書きます。

例:SARAH CHEN (30s), sharp-eyed and perpetually underdressed for the weather, pushes through the revolving door.(サラ・チェン(30代)、鋭い目つきで、いつも天気のわりに薄着の女性が、回転ドアを押して入ってくる。)

せりふ

人物名は、そのせりふの上に、すべて大文字で中央に置きます。せりふは(上の余白の項で示したとおり)字下げし、シングルスペースにします。脚本のせりふを引用符で囲んではいけません。

パレンセティカル、つまり人物名とせりふのあいだに置く短い演技の指示は、控えめに使いましょう。「皮肉っぽく」「ささやいて」「ジョンに」などは、どれも許容されるパレンセティカルです。けれども、数語を超える指示が必要なら、代わりにアクション行に書きましょう。パレンセティカルの使いすぎは、アマチュアの脚本の典型的な特徴です。俳優がせりふを解釈することを、書き手が信頼していない印象を与えるからです。

トランジション

トランジション(CUT TO:、DISSOLVE TO:、SMASH CUT TO:)は右揃えにし、すべて大文字で書きます。現代の脚本では、トランジションは控えめに使われます。シーンとシーンのあいだの基本のトランジションはカットなので、すべてのシーンのあいだに「CUT TO:」と書く必要はありません。トランジションを使うのは、その種類が意味を持つときだけにしましょう。衝撃的な対比を生むSMASH CUT、時間の経過を表すDISSOLVEなどです。

タイトルページ

脚本のタイトルページには、次のものを入れます。

  • ページの中央:すべて大文字か通常のタイトルの書き方で作品名、続けて「Written by」と自分の名前。
  • 右下か左下:自分の(またはエージェントの)連絡先。
  • スペック脚本(依頼なしに書く脚本)にWGAの登録番号は入れません。自信のなさを示してしまいます。

ページ数

標準的な長編映画の脚本は90〜120ページです。コメディは短めになりがちで(90〜100ページ)、ドラマは長めになりがちです(100〜120ページ)。120ページを超えると、中身がどうであれ、脚本が長すぎるというシグナルになります。脚本が135ページあるなら、ほぼ間違いなく構成に問題があります。

書式でよくある失敗

書式が統一されていない

いちばんよくある失敗は、統一されていないことです。第1章で「Chapter One」を使い、第2章で「Chapter 2」を使えば、雑に見えます。14ページのヘッダーが15ページと違う作品名の略し方をしていれば、雑に見えます。シーンの区切りが理由もなく#と* * *のあいだを行き来していれば、雑に見えます。ひとつの慣習を選び、原稿全体を通して守りましょう。

飾り立てた書式

凝ったフォント、装飾的なヘッダー、色付きの文字、変わった行間、中央揃えの地の文、原稿ファイルに埋め込んだ画像。どれも「アマチュア」だというシグナルになります。原稿は作業用の文書であって、デザインされた作品ではありません。完成した本の見た目は、出版社のデザイナーが扱います。書き手の仕事は、標準的な書式で、すっきりした読みやすい文章を届けることです。

Tabキーによる字下げ

前述のとおり、段落の字下げにTabキーを使ってはいけません。字下げはワープロソフトの段落書式で設定しましょう。Tabキーで作った字下げは、ファイルを別の形式に変換したり、別のソフトで開いたり、組版システムで処理したりするときに問題を起こします。

ピリオドのあとの2つのスペース

これはタイプライター時代の慣習で、現代の英文原稿にはふさわしくありません。ピリオド、コロン、疑問符、感嘆符のあとのスペースはひとつにしましょう。ほとんどのスタイルガイド(シカゴ・マニュアル、AP)と、ほとんどの出版社が、文末の約物のあとのスペースをひとつにするよう求めています。

シーンの区切りがない

シーンが変わったのに(時間、場所、視点が変わったのに)区切りの記号で示さないと、読み手は一瞬迷ってしまいます。必ず目に見えるシーンの区切りを使いましょう。空行だけでは信頼性が足りません。#か* * *を使います。

投稿ガイドラインを無視する

繰り返しますが、投稿先のエージェント、出版社、コンテストの具体的な投稿ガイドラインを必ず確認しましょう。.docファイルを求めるところもあれば、.pdfを求めるところもあります。特定のヘッダーの書式を求めるところもあります。独立したタイトルページではなく、本文の1ページ目に語数を書くよう求めるところもあります。ガイドラインは、このガイドの標準より優先されます。ガイドラインには正確に従いましょう。それには理由があり、無視すれば読んでいないと思われます。それは、与えたい第一印象ではないはずです。

書式のためのツールとソフト

散文(長編と短編)の場合

散文の原稿を投稿するときの業界標準は、Microsoft Wordです。ほとんどのエージェントや編集者は、.docか.docxのファイルを想定しています。ほかのソフト(Scrivener、Google ドキュメント、LibreOffice)で書いているなら、投稿用に.docxでエクスポートしましょう。

Scrivenerは、整理のための機能が充実していることから、長編の書き手に人気があります。原稿のコンパイル(全体をひとつのファイルにまとめる機能)にも強く、好きな書式で書いておき、投稿用に標準的な原稿書式でコンパイルできます。Scrivenerを使うなら、時間をかけてコンパイルの設定を正しく整えましょう。初期設定が標準的な原稿書式と合っているとは限りません。

脚本の場合

脚本用のソフトを使いましょう。業界標準はFinal Draftです。Fade InとHighlandは評価の高い代替ソフトです。WriterSoloは比較的新しい選択肢です。どれも、複雑な書式の条件を自動で処理してくれます。予算が限られているなら、Fountain記法(脚本のためのプレーンテキスト形式)で書き、無料の変換ツールを使って正しい書式のPDFに変換しましょう。

Microsoft Wordで脚本の書式を整えようとしてはいけません。技術的には可能ですが、実際にはみじめな作業で、正しい書式の脚本を見慣れた業界のプロの目には、結果がどうしても少しおかしく見えてしまいます。

書式と質についての最後のひと言

書き手が12ポイントではなく11ポイントのフォントを使ったというだけの理由で原稿を不採用にしたエージェントは、これまで一人もいません。シーンの区切りにハッシュ記号ではなく3つのアスタリスクを使ったというだけの理由で作品を不採用にした編集者も、一人もいません。書式は大切です。けれども、それは就職の面接で清潔な服装が大切なのと同じ意味で大切なのです。期待される最低限であって、採用を勝ち取るものではありません。

採用を勝ち取るのは文章です。見事に書かれた原稿は、書式が少し違っていても読まれます。平凡な原稿は、書式が完璧でも不採用になります。書式は正しく整えましょう。簡単だから、プロらしいから、そして自分の言葉とそれを読む必要のある人とのあいだの障害をひとつ減らせるからです。それから心配するのをやめ、本当に大切な仕事、つまり物語に集中しましょう。

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