ビートシート・テンプレート
ブレイク・スナイダーの『SAVE THE CATの法則』のビートシートは、もともと脚本家のために考えられたものですが、いまでは小説の世界でも最も広く使われているプロット設計の道具のひとつです。理由は単純で、役に立つからです。ビートシートは物語を15のストーリービートに分け、それぞれに明確な役割と、物語のなかのおおよその位置を割り当てます。実際に使えるほど細かく、それでいてまったく違うタイプの物語にも合わせられるほど柔軟な、構成の骨組みが手に入ります。
このテンプレートでは15のビートを順に取り上げ、それぞれが何を果たすのかを説明し、自分の物語を枠組みに当てはめて書き込めるようにしています。長編小説でも脚本でも短編でも、ビートシートはペース配分と構成を点検する頼れる道具になります。
始める前にひとつ注意があります。ビートシートは道具であって、物語を縛る枠ではありません。パーセンテージはあくまで目安で、絶対の決まりではありません。優れた物語のなかには、あえてこの比率を崩しているものもあります。各ビートがなぜ大切なのかを理解したうえで、自分の物語のどこに置くかを考えて決めましょう。
ビート1:オープニング・イメージ(0〜1%)
オープニング・イメージは、物語によって変わってしまう前の、主人公の世界を切り取った一枚です。作品のトーンと舞台、そして主人公のいまの状態を示します。ビフォー・アフターの「ビフォー」の写真だと考えてください。ファイナル・イメージ(ビート15)が「アフター」になり、両者の距離が物語のアークの大きさを表します。
ここに書くこと:どんな場面、雰囲気、主人公の状態から始めたいかを書きましょう。最初の数ページで、読者に何を感じ取り、何を理解してほしいですか?
ビート2:テーマの提示(5%)
物語の早い段階で、誰かがテーマを口にします。たいていは主人公に向けた言葉ですが、主人公はまだそれを理解できる段階にいません。助言かもしれませんし、問いかけや会話のなかの何気ないひと言かもしれません。主人公は聞いてはいても、その意味にはまだ気づきません。初めて読む読者も、気づかないかもしれません。けれども物語の終わりには、このひと言が作品全体を貫くテーマの柱として響いてきます。
ここに書くこと:物語のテーマとなる問いは何ですか?誰が、どんな状況でそれを口にしますか?その場で主人公はどう反応しますか(あるいは反応できずにいますか)?
ビート3:セットアップ(1〜10%)
セットアップでは、主人公の日常の世界を紹介します。人間関係、日々の習慣、いまの暮らしぶりです。同時に、主人公の人生に欠けているものの種もまいておきます。セットアップを読み終えた読者が、この人物が何者で、何が足りないのか(本人がその欠落に気づいていなくても)をどちらも理解できている状態が理想です。後で重要になる人物、サブプロット、舞台の要素は、すべてここで登場させるか、伏線を張っておきましょう。
ここに書くこと:主人公の現状をかたちづくる主な要素を挙げましょう。どんな人間関係、習慣、境遇が主人公の暮らしを決めていますか?「停滞は死」にあたる要素、つまりこのままの暮らしを続けられなくするものは何ですか?
ビート4:きっかけ(10〜12%)
きっかけとは、主人公の日常を揺るがし、物語を動かし始める出来事です。少しずつ気づいていくようなものではなく、はっきりとした外からの出来事であるべきです。一本の電話、誰かの死、発見、到着、旅立ち。何かが起こり、主人公はもうそれまでどおりの暮らしを続けられなくなります。
ここに書くこと:主人公の現状を壊すただひとつの出来事は何ですか?具体的に書きましょう。具体的な瞬間を指させないなら、きっかけがぼやけすぎているのかもしれません。
ビート5:悩みのとき(12〜25%)
悩みのときは、主人公がためらう期間です。冒険への誘いを受け取り、それに応じるかどうかを考えています。ただ内にこもって思い悩む場面ではなく、心のなかでも外の世界でも積極的にぶつかり合う葛藤として描きましょう。主人公は情報を集め、味方に相談し、危険を見積もります。このパートでは、主人公の旅がなぜ大切なのか、なぜ最初の一歩を踏み出すのが本当に難しいのかを、読者に納得させます。
ここに書くこと:主人公がすぐに新しい道へ進めないのはなぜですか?いまのままでいるべき理由として、どんなものがありますか?最後に行動へと背中を押すものは何ですか?
ビート6:第一ターニング・ポイント(25%)
第一幕から第二幕へ移る転換点です。主人公は古い世界を後にし、新しい状況へ踏み込むと、はっきり選びます。これは主人公自身の選択でなければならず、身に降りかかった出来事であってはいけません。主人公は中心となる対立に関わることを自分で決める必要があります。この能動的な決断こそが、主人公をただ運ばれていく乗客と分けるものです。
ここに書くこと:主人公はどんな選択をしますか?何を後に残し、何のなかへ踏み込みますか?なぜここで後戻りできなくなるのですか?
ビート7:サブプロット(Bストーリー)(22〜30%)
Bストーリーでは、もうひとつの筋が始まります。多くの場合、テーマを語る役目を担う人間関係です。恋の相手であることが多いものの、師匠や新しい友人、ライバルでもかまいません。Bストーリーの人物は、主人公がビート2で示された教えを学ぶための仲立ちになることがよくあります。Aストーリーが主人公を外側から試すのに対し、Bストーリーは内側から揺さぶります。
ここに書くこと:Bストーリーの人物は誰ですか?主人公とはどんな関係ですか?その関係はテーマとどう結びつきますか?
ビート8:お楽しみ(25〜50%)
ここは「設定が約束したもの」を届けるパートです。読者に本を手に取らせたコンセプトを、実際に味わってもらう部分です。強盗ものなら、仲間が計画を練り、実行する場面。ロマンスなら、ふたりが近づいていく過程。探偵小説なら捜査です。主人公は新しい世界で積極的に動き、障害にぶつかったり小さな勝利を得たりしますが、対立の重みがすべてのしかかってくるのはまだ先です。
ここに書くこと:設定が約束したものを届けるのは、どの場面ですか?このパートを面白くする見せ場、出会い、発見を挙げましょう。主人公はどんな小さな勝利と、次第に厳しくなる試練に向き合いますか?
ビート9:ミッドポイント(50%)
ミッドポイントは、ステークス(失うもの)を引き上げ、物語の向きを変える大きな転換点です。「偽りの勝利」(主人公は勝っているように見えるが、その勝利は中身がないか一時的なもの)か、「偽りの敗北」(挫折を味わうが、それが最終的に本当の解決へ主人公を導く)のどちらかになります。どちらであっても、ミッドポイントで対立の性質が変わります。新しい情報が明らかになり、主人公は問題をより深く理解し、時間との闘いが始まります。
ここに書くこと:ミッドポイントは偽りの勝利ですか、それとも偽りの敗北ですか?どんな新情報や逆転が起こりますか?ステークスはどう変わりますか?
ビート10:迫り来る悪い奴ら(50〜75%)
ミッドポイントを過ぎると、外からの圧力は強まり、内なる迷いは増えていきます。敵対者(人物であれ、社会の仕組みであれ、主人公自身の欠点であれ)が優勢になります。チームは仲たがいし、味方は揺らぎます。サブプロットが集まってきて、圧力はさらに高まります。このパートでは、四方の壁が迫ってくるような感覚を読者に与えましょう。「お楽しみ」で主人公が手にした強みは、ひとつ残らず削られるか、厄介なものに変わります。
ここに書くこと:ミッドポイントの後、敵対する力はどう強まっていきますか?どんな迷いや裏切りが主人公を追いつめますか?サブプロットは息抜きではなく、どのように圧力を加えますか?
ビート11:すべてを失って(75%)
「すべてを失って」は、主人公がどん底に落ちる瞬間です。何か、あるいは誰かが失われます。文字どおりの喪失(死や別れ)のこともあれば、比喩的な喪失(希望、信頼、目的を失うこと)のこともあります。スナイダーはこれを「死の気配」のビートと呼びました。実際の死、あるいは象徴的な死を伴うことが多いからです。主人公の当初の計画は完全に失敗し、これまでのやり方はもう通用しません。
ここに書くこと:何が失われますか?この瞬間が取り返しのつかないものに感じられるのはなぜですか?それは主人公に残っていた守りを、どのようにはぎ取りますか?
ビート12:心の暗闇(75〜80%)
「心の暗闇」は、「すべてを失って」の後に訪れる感情の余波です。主人公は崩れ落ちたものの只中に座りこみ、起きたことを受け止めようとします。最も深く自分を見つめる場面で、主人公はそれまで信じて生きてきた嘘と向き合い、まだ行動には移せなくても、真実が見え始めます。このビートを急がないでください。クライマックスの感情の重みは、希望が戻る前に読者が主人公の絶望を味わいきれるかどうかにかかっています。
ここに書くこと:主人公はその喪失にどう反応しますか?自分自身について、自分のやり方について、あるいは思いこみについて、何に気づきますか?絶望から決意へと切り替わるきっかけは何ですか?
ビート13:第二ターニング・ポイント(80%)
新しい理解(多くはAストーリーで得た教訓とBストーリーの関係の両方から生まれるもの)を手に、主人公は新しい計画を立てます。ここが第三幕への転換点です。主人公は嘘を捨てて真実を受け入れたか、少なくともそれまでと違う行動がとれるほどには、真実をはっきりと見ています。新しい計画は、Aストーリーで学んだこと(外の世界で通用する力)とBストーリーで学んだこと(内面の成長)を組み合わせたものです。
ここに書くこと:主人公の新しいやり方はどんなものですか?元の計画とどう違いますか?この新しい方向を形づくる、Bストーリーからの気づきは何ですか?
ビート14:フィナーレ(80〜99%)
フィナーレはクライマックスの一連の場面です。主人公は新しい計画を実行し、敵対者と中心の対立に真正面から立ち向かいます。スナイダーは脚本向けにフィナーレをさらに五つの小さなビートに分けましたが、長編小説で押さえるべき原則は次のとおりです。主人公は自分の力で成功をつかまなければならない(土壇場の援軍に救われてはいけない)。内面のアークは外の対立と同時に決着しなければならない。解決は、物語の前半でまいた種から育つものでなければならない。セットアップで仕込んだチェーホフの銃は、すべてここで撃たれるべきです。
ここに書くこと:クライマックスの流れを書き出しましょう。主人公はどのように敵対者と対決しますか?内面の変化を示すのはどんな選択ですか?サブプロットはどう決着しますか?
ビート15:ファイナル・イメージ(99〜100%)
ファイナル・イメージはオープニング・イメージと対になり、物語を経て主人公とその世界がどう変わったかを示します。オープニングが静かなアパートでひとり暮らす孤独な人物を映していたなら、ファイナル・イメージでは人に囲まれた姿や、仕方なくではなく自分で選んでひとりでいる姿が描かれるかもしれません。ビート1とビート15の対比が、アークを目に見えるかたちで証明します。
ここに書くこと:読者が最後に目にするものは何ですか?それはオープニング・イメージとどう対照をなしますか?主人公の変化について、何を伝えますか?
このテンプレートを自分の作品に合わせるには
ビートシートは、ジャンルや形式を問わず驚くほど応用がききます。自分のプロジェクトに合わせて使うためのヒントを紹介します。
- 長編小説の場合:パーセンテージは、おおよそページ数や語数の割合に置き換えられます。9万語の長編なら、ミッドポイントは4万5000語前後、きっかけは9000〜1万1000語あたり、という具合です。目標として使い、絶対の数字とは考えないでください。5〜10%の範囲に収まっていれば十分です。
- 脚本の場合:スナイダーの元のパーセンテージは、110ページの脚本のページ数にほぼそのまま対応します。ビートシートが最も正確に働くのはこの形式です。
- シリーズ作品の場合:各巻がそれぞれのビートシートに沿いつつ、シリーズ全体はより大きなビートシートに沿うことができます。三部作では、第2巻のミッドポイントがシリーズ全体のミッドポイントを兼ねることがよくあります。
- 時系列どおりに進まない物語の場合:ビートはそのまま当てはまりますが、時系列とは違う順番で示されることがあります。時系列順ではなく、物語の順番(読者が出会う順番)でビートを配置しましょう。
- 人物中心の純文学の場合:外的なビートは目立たないかもしれません(爆発ではなく、ひとつの会話だったりします)が、構成上の役割は同じです。きっかけはやはり日常を乱すものであり、ミッドポイントはやはり転換で、「すべてを失って」はやはり喪失です。規模は変わっても、骨組みは変わりません。
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